「殺してくれないか、頼むから」
酔うと大抵そのようなことを口にする、悪い癖だ。
いつからか消えてしまいたいと思うことが多くなってきた。何もかもがどうでも、よくなっているしまう。
昭和の右寄りな小説を読みすぎたのか、
それとも戦争映画の見過ぎか。
平和なこの世界を憎んでいたし、その平和ボケしてる、自分自身を憎んでいた。
今、たったこの瞬間にミサイルに怯えて生きてる人がいるのに、甘えた恋だとか愛とか下らなことをしゃべっている。でも、それは俺も同じだった。インターネットからは残酷な内戦の日常が報道されているのに、俺たちはどんな服を着るべきか?というどうでもいいことを大真面目に議論していた。その中心に俺がいるのだから、もう、笑うしかない。
まじうけんねー
ほんとやばいまじやばい
ほんとそれ
つうか、ワンチャンあるっしょ
まじやばい、まじやばい、まじやばい
なんだろう、ここにいるのは宇宙人か?おれはいったい誰と話してるんだろう。
逃げようとしてスマートフォンを開いても声優が結婚したとか、野党が分裂したとか、どうでもいいニュースが洪水のように押し寄せては消えてゆく。そして頭には何も残らない。
この国はどうなったんだ
とっくに崩壊している
いや、崩壊しているのは俺の、頭か
なあ教えてくれよ?悪いのは社会かおれか
狂ってるのは俺なのか?あんたなのか?
屋上に上がってみた。ここから飛び降りれば楽になれるのか、足が震えて5分も持たなかった。死にたいのか生きたいのかそれがわからなかった。
眼下にはただ多くのビルたちがまるで竹の子のように生えていただけだった。