Kaz Works

テクノロジーは人に寄り添ってこそ意味があるらしい

宇宙ステーション・ワークスより

ここは地球からはるか何光年も離れた場所だ。宇宙ステーション「ワークス」は1000人の人間の居住空間として国連が建造したコロニーである。理化学研究所とネットステーション社(以下、ネ社)が共同開発し、日本の宇宙省が運営している。が、ここには現在ひとが存在しない。無人となったコロニーがなぜ、今も運営されているか、それは2つのファクターがあることを説明しなければならない。1つは太陽光発電によるエネルギー供給。1日1万デジワットという膨大なエネルギーはワークスを運用するのに十二分なエネルギーを供給することが可能だ。しかも遮蔽物の存在しない宇宙空間は安定した電力を生み出すことを可能にしている。ワークスは太陽を中心に公転している、つまり、一年中太陽とまったく距離を変えずに太陽光を浴びることができるということだ。481日に一回転、それがワークスの公転期間であった。つまりこのコロニーでは1日を481日で計算することになる。もうひとつ、AI「リリス」の存在を諸君に説明しなければならない。このワークスの頭脳と呼ばれるプログラムはすべての電力供給を管理するだけではなく、ハードウェアの故障を検知し、自動修復することを可能にしている。ウィング、エレベーター、空調設備など、ありとあらゆる機構が自動的に修復されていた。それは人口バイオマスにってあらゆる細胞が再現可能になったからである。金属やプラスチックなどは大小ありとあらゆるものが生成可能になった。それなら水素とわずかな二酸化炭素で作られる。こうして完全自走型コロニーは240年安定稼働を可能にした。しかし、人間がいないのは謎である。

 


ここで時計を10年戻してみよう(プロジェクターから映し出される映像が切り替わる)

 


パチリ

 


2199年、宇宙ステーション・ワークスは順調に航海を続けていた。といっても太陽の周りを回っているだけの比較的気楽な航海である。気楽な航海と表現したが自走するためのエネルギーが不要なだけで、やるべきタスクは山のように積まれている。清潔な空気、水の提供、安定した照明、そしてそれを実現させるエネルギー供給、管理ステーション(これは地球に存在する)への定期的な通信、10000以上ある機構・機器のチェック、そして自動修復、その全てを管理するAIリリス。プログラムもバグが存在しない訳ではない。しかしそれすらも修復する機能をリリスは持ち合わせていた。ちょうど人間が自分の哲学、思想を客観的に評価して、そして誤りがあると改めるのにていることからアンチテーゼ・リプレイスと呼ばれる。