Kaz Works

テクノロジーは人に寄り添ってこそ意味があるらしい

機械人形は笑わない

ヘイグス粒子が閾値を超えると周りの視界はその認知率を著しく下げる。


(エナが濃い...)


途端に息ができなくなる。機械人形でないと肺呼吸に苦労する。整体素子の59パーセント以上を義体化すれば水の中でも、人口の肺が水から酸素を作り出し呼吸は不要になる。しかし、59パーセントになんの根拠もなかった。たしか高等学校の教科書に書かれたはずだが。


(くそっ!あのバカ教官、嘘ばかり教えやがって!)


正解は59パーセントでは肺呼吸が必要だ!水の中では間違いなく死ぬ。マニュアル通りには実戦は勝てないがその情報の乖離がどれほどかが生死を分ける。教科書を過信することはできないが無視もできない。


空を見上げると暗雲が立ち込み上げてきた。脳に受信した天気予報では10分後に雨が降るはずだが、果たして...


四肢が分断されるかと錯覚するほどの衝撃を受ける。気づくと背中が焼かれた臭いが【情報として】脳に受診される。意図的に臭覚の機能をオフにしているのは戦闘中に誤作動を受けないためだ。臭いは判断を左右する重要なファクターだ。だからこそ、客観的な事実が必要になる。


臭いで過去の記憶がよみがえることはないだろうか?昔の恋人、旧友と過ごした教室、晩御飯を作ってくれる優しい母親、それらは臭いとともによみがえる言わば圧縮された記憶を解凍するキーだ。だからこそ戦闘中に情緒的にならないよう、臭覚をオフにすることを戦闘員は強いられる。その他、生殖機能をオフにすることも可能だが著しく精神に影響が及ぶため、国際法で禁じられている。


北の独裁国家が違法である人体実験がマスコミによりリークされたのはエディ歴254年のことである。23に及ぶ禁止された人体実験は記憶の編集、脳波のデジタル化など人格に影響を及ぼすものを多々、含まれていた。


「人格を壊すことはいけません、改竄も同様であります」