Kaz Works

テクノロジーは人に寄り添ってこそ意味があるらしい

2020-01-01から1年間の記事一覧

大野部長の長い1日

東証システムの月曜日は早い。朝6時にバッチ処理が終わり、業務開始前の 東証は終日までの売買停止を決めた。これは売買システムが稼働してから初めての出来事である 大野はしばらく呆然として晴海オフィスを眺めた。腹を切るしかない A systemの管轄は開発…

僕は一人

池袋の居酒屋でひとり、ホッピーの黒を流し込むと「生きている」と思うのです。部屋にいても、オフィスにいても孤独感は増すばかりです。辛うじてTwitter のタイムラインをのぞけば、大丈夫?と声をかけてくれる仲間?はいます。会ったこともありません、顔…

或る街の風景

池袋の駅前は人で溢れて、まるで洪水のようでした。コロナ禍で自粛とは関係ない顔で闊歩している男女が多かったように僕には見えました。いや、僕の心がそう見せたのかも知れません。「コロナは嘘でした」来年あたりそんな報道がされるのではないかと思うほ…

秋の秋刀魚

商店街の通りには大抵、大衆居酒屋がありまして秋になると秋刀魚とサッポロビールの大瓶でやるのが習慣になりました。独身男を40年間もやってると大抵が面白くもない顔をしてグラビアアイドルやら芸能人の不倫などどうしようもない記事を読むのが楽しくて楽…

歴史(ワールドネット創世記)

2051年 宇宙エレベーターの完成、武蔵小杉タワー、京都ツインタワー、札幌ブルータワーの三機が運用 2055年 AI人格保護に関する法案「アンドロイド保護法」が施行される 2099年 ワールド・ネットワークスが完成された世界の98%が高速ネットワークインフラで…

ある中年男性の憂鬱(前編)

言い知れぬ不安がどこから来るのか分からないでいるまま、40という年齢を迎える。社会情勢が大きく変わり「新しい生活様式」という、ほとんど冗談みたいな時代が、本当に訪れてしまった。まるでつまらない喜劇の設定のようだ。去年の常識は今年の非常識とな…

物を書く男の物語

じめじめとしたハッキリしない天気の日でもう何日も外へ出ていない。小説家という職業は基本的に人に会わず部屋の中で黙々と文章を打ち込む。かれこれ、何日も人と喋っていない。人恋しいかと言われれば確かにそうだが、サラリーマン時代に比べれば嫌な上司…

1984/ジョージ・オーウェルを読み終えて

この歳になってようやく古典SF「1984」を読むことが出来たのは、少し誇らしい気持ちになるものである。いや、もちろん若い時にとっくに読み終えておけという気持ちもなくはない。これも全ては読書の才能(とでもいうのだろうか)がない自分の不甲斐なさでは…

熟れた毒リンゴ

「私は罪を犯しました。汚れた果実を食べたのです。身も心も汚れてしまいました。もう娘を抱く資格もありません」 「人は過ちを犯すものです。しかしその過ちを認めやりなおすことのできる強さをもっています」 トーマス神父はケイトの肩に手を置いた。グロ…

ピアスとバーボン

「ぐたなぐちゅヌッポンのすりすりだよー、ぱいおつどつむかんのむひむひ!」 「ムライさん」 「は?」 「いつも思うーですけど、その呼びかけ、逆効果じゃないですか? 「そお?」 「キャバクラ、ソープじゃないんですから、うちは。ガールズバーですから、…

ビフォア・コロナを知らない子供達

コロナが無かった時代を僕たちは知らない。親父に聞くと「あの頃はリモートワークもなくて・・・」と長い話になるので、僕の中ではこの話を家ですることはNGだ。zoomもスカイプもなかった時代を想像するなんてできるはずがない。わざわざ「居酒屋」という酒…

夜明け前

月がやけに明るい夜であった。徳川幕府が敗れ、国は政権を巡って争い、国が疲弊していた。皆々は不安を抱えていた。しかし何処か希望(のようなもの)を感じているから不思議である。板垣の命を狙うために、藤井は胸に拳銃を忍ばせていた。上野から池袋のど…

現国の女と呼ばれた先生

放課後の掃除に声をかけられた。ケイコ先生だ。普段、生徒と喋らないくせに珍しいことだ。授業がどうだとか、友達とうまくいっているのか、とか聞いてきやがった。正直、毎日が退屈で死にそうだったので、「はあ、」と、白けた返事をしてやった。モテない高…

緊急事態宣言は1ヶ月延長された

日本は安堵とやはりそうかという、諦めにも似たため息で包まれた。もちろんオレが直接この目で見たわけでも感じたわけでもない。そういう情景を思い浮かべただけだ。早ければ半月後には解除される区域があると国のトップは説明した。額に汗をかくでもなく淡…

マーガレッド

「時々、わからなくなるのよ。自分がどこから来て、どこへ行こうとしているのか」 「あなたはこの惑星で生まれた第2501 番目の戦士よ。住民票システムにもちゃんと記録されているわ」 「ううん、そういうのじゃないの。親の記憶だとか、子供の頃の記憶だとか…

皆、iPhoneの前では素直になる

奥さんの顔よりiPhoneを眺めている時間の方が多くなってきた。家族にいると息が詰まり、書斎へと逃げ込んでしまう。ネットワークに繋がっている時の方が落ち着くのは何故だろう。感情をぶつける相手はいないのに、悩みを書き込む相手はここにある。つまりは…

ヒーローの条件

憧れたヒーローが存在しないと知ったのは16歳の夏だった。悪を挫き弱気を助ける誰もが憧れるヒーロー、NINTENDOスイッチも帽子もすへで赤に統一したのはもちろんヒーローの色が赤だからだ。ヒーローは必ず登場する。遅れて。そして最後には勝つのだ最後には…

MCとしてのオレは、お前よりもっとうまく番組を回せるぜ

占いランキングにチャンネルを切り替えた。オレの嫌いな番組だ。占いという胡散臭いものに順位を付ける。A型とO型の相性がどうのこうのだとか、チーズケーキがどうたらやら、くたまらない会話が続く、いらいらさせる。話の構成がまとまりがなく、そしてオチ…

ザボンラーメン・鹿児島

飛行機の機内は宇宙船の中を連想させる。皆々が二時間弱の旅行を楽しむでもなく(恐らくビジネスマンが多いのだろう)眠りに着いた。一様に同じような顔をしている。これからの仕事に備えるように、海外旅行特有の熱を持ったものは誰一人いない、様に映った。…

生と死

「生も死も表裏一体だ、どちらが欠けても成立しない光と陰のようなものだ」 「僕は死ぬのが怖いです、死を痛みをどう避けていけばいいかを考えてしまう。時々、夜ねれない時に死ぬ時の風景を考えることがあります。だんだんと意識が遠のいて視界がぼやけるの…