Kaz Works

テクノロジーは人に寄り添ってこそ意味があるらしい

ザボンラーメン・鹿児島

飛行機の機内は宇宙船の中を連想させる。皆々が二時間弱の旅行を楽しむでもなく(恐らくビジネスマンが多いのだろう)眠りに着いた。一様に同じような顔をしている。これからの仕事に備えるように、海外旅行特有の熱を持ったものは誰一人いない、様に映った。飛行機は果たして無事に飛び立ったが、誰一人として顔色を変えない。山下だけがそわそわとシートベルトを確認したり、物を書いている。寝付けないのだ。

「すみません、お客様」

若いスチュワーデスに声をかけられた。熟れた女で、色気が漏れそうであった。

「荷物は前の座席の下に置いていただけますか」

何百回と使った注意を山下に向けた。

「すみません」

余計な仕事を増やしたなと思った。無駄なことが嫌いなのだ。

途中でガムの様にまずいチョコレートを食わされた。窓の外はまるで何も見えない。沈黙が降りて、山下は自分の世界へと飛び立った。眠りは一向に降りてこない。

隣はサラリーマンと言った顔立ちで涼しい顔で寝息を立てている。旅に慣れているのだろう、自分も早くこうならなければ、と思った。スケジュールの確認をしたいがネットに繋がらないので諦めた。電源のプラグもないので、充電もできない。まあいい、着けばいいのだ。着けば。現地の気温だけが気になった。一月の鹿児島は寒いのだろうか。寒いのは苦手であった。そういえば羽田空港で朝飯を食っていない。離陸に遅れそうになり食べれなかったのだ。ひどい空腹だ。