Kaz Works

テクノロジーは人に寄り添ってこそ意味があるらしい

さまよえる勘定系クラウド

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大手町の朝は忙しかった。電話が鳴り止まず、部長や幹部は青い顔をして、まるで宿題を忘れた小学生のように戦々恐々としている。

(なにかが起きたな)

ネットニュースやらSNS漁っても特段、関係ありそうなトピックが見当たらなかったので金融庁からのおとがめ(営業停止)はなさそうだが。

「晴海で事故?」

青田幹部の叫び声がオフィス中に響き渡る。禿げ上がった頭が茹でタコのようになっていて中谷は思わず吹き出しそうになった。晴海には営業部門の本丸がある、であればセキュリティの重大インシデントか上層部の逮捕か、どちらにしろエンジニアである、中谷には関係ないことだ。システムトラブルであれば個人携帯にまず連絡が行くことになっている。エンジニアにとって本社のトラブルや幹部の逮捕にはあまり関心がない。どうでもいいことだ。大手企業にとって、法令違反など、日常茶飯事だ。情報統制されるため小さいニュースはもみ消されるが、大小合わせれば年間100以上のコンプライアンス違反が行われている。そのなかでもやりすぎた違反がいわゆる我々が目にする事件と言われるニュースだ。それでしかない。


中谷に関係あるのは勘定系トラブルやネットワーク障害などのシステム系トラブルだ。幹部の女性問題やインサイダー取引などは、芸能人のスキャンダルほどの意味しかない。


「聞いたか?中谷」

「どうせ幹部のSM写真が流出したとか週刊誌のネタだろ?」

「いや、どうやら違うらしい」

営業の曽山は上層部にも顔が聞くため、この類のネタは早く手に入れる。ゴシップ好きが高じて暴露本を出す勢いだ。