Kaz Works

テクノロジーは人に寄り添ってこそ意味があるらしい

最後の新子安事務所

「これとこれが退職届、あとはまあ厚生年金その他もろもろ、ネット見れば色々書いてあるから、こんなご時世だから送別会とかはないけど、みんな宜しく言ってたから」

「はあ・・・」

「しかしなんだね、一時は課長までのぼりつめたそうじゃない。立派なものよ、あなた。ただ社内政治に負けて現場戻り、管理しかやってなかった中年にリーダーが務まるわけもなくあっけなく窓際族。まあ、いいんじゃない?いっときは夢も見れたでしょう。銀座の寿司やら、六本木のワインやら、経費使って部下をおもちゃにして。相当嫌われてたらしいね。社内でも有名よ?ブレイカーって言って、社員がじゃんじゃん潰れちゃう」

「・・・」

「ほら、そのだんまり。困ったら1時間でも2時間でも黙っちゃう。それがあなたの処世術だったのかしらね。ハートはたいしたものよ。面倒臭いしごとは全部、幹部社員に丸投げされ、現場にも当たり散らされ、まさに四面楚歌。社内に味方は一人も居ない、たった一人で古今奮闘、あたしならとっくに鬱になっちゃうわね。