Kaz Works

テクノロジーは人に寄り添ってこそ意味があるらしい

それは脆く弱い基盤の上を

この世から消えるものは全て美しい、と始まる小説はなんだったかもう忘れてしまった。しかし、その言葉に表現するように、この世から消えようとするものは美しい。民族の繁栄より国家の滅亡を、大企業の東証一部上場より、倒産の時の社長の会見を、結婚よりも葬式を、そういった「失う瞬間」を美しいと思うことが多くなったと気づいたのは三十代後半の冬だった。


例年以上に大雪の関東は、電車のダイヤが乱れ、車の交通事故が多発し、東京のインフラの貧弱性を露呈した形になった。つまり、雪がふると社会活動が一気に停止してしまうということだ。NHKを見ながらあたふたしている人たちを他人事のように眺めていた。自然をコントロールしていると錯覚している人間たち。だがときに雪が降り、台風が来ると途端にインフラは乱れる。3.11の大震災でも原発を守ることが出来なかった、脆い基盤の上を、豆腐の上に乗るような状態で、毎日を生活しているのだ、と改めて思う。


【雪がもっと降ってこの東京を飲み込んで、社会もインフラも止めて欲しい】


そうすれば明日生きる理由が無くなるのに、と呟いた。雪の降る夜に。