「野宿?」
聞きなれない単語が飛び出したので、大吾は思わず聞き返した。
「野宿ってあの?道とか駅とかで寝るやつ?女の子が?」
ええ、と少し恥ずかしいのだろう気まずい様子で頷いたその子はリョウコと名乗った。長いこと美容院に行ってないのだろう、茶髪がグラデーションを作り出し、プリンのようになっている。
野宿が趣味な女の子にあなたは会ったことがあるだろうか?僕は今日あった。美人というわけではないが、愛嬌のある笑い方をする人だった。少し地味な店の店員で小物やら文房具やらを売っていた。湯島の小さな雑貨屋でエクリプスという名前の店だった。日食と言う名のその店は彼女が切り盛りしてるらしかった(これは僕の推測)。1人のスタッフで発注や在庫管理、営業全てを担っており、それは一国の主人を思わせた。