Kaz Works

テクノロジーは人に寄り添ってこそ意味があるらしい

システムとテーゼ

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情報庁は2099年に総務省から独立した組織である。国内のネットワークを全て監視できる権限を持つ唯一の組織であり、その情報は全て公安に提出されることが義務付けられていた、テロ組織や反社会勢力の監視、というのは表向きの国民への説明であり実際は日本国民一億人を全て監視することを目的に活動されていた。メール、ネットワークのパケットの傍受を可能にするということは人々の生活を可視化されるということであった。内閣支持率は不法に操作され、印象操作を楽にすることが可能になった。どんな法案が通されていても、首相がマリオのコスプレをすれば支持するほどこの国民は思考停止に陥ってしまった。何をするかはほとんど議論されることはなく、好きか嫌いかで世論は政党を支持した。マスコミは政府に掌握され、一部の反政府である広報誌や週刊誌は、国民の鬱憤ばらしでしかなく、「まあ、そうは言ってもかわりはいないからな」ということなかれ主義で、与党は衆議院参議院共に圧倒的な議席を保つことに成功した。Twitterフェイスブックはテレビより事実を曲げることが楽になる。フェイクニュースは簡単に拡散されてアメリカのトランプ大統領はロシアのネット操作により就任できたことが、一部のメディアで暴露された。インターネットの登場で蛇口をひねれば水が出るほど簡単に、国民は操作されるようになった。毎日、見ているネットニュースや広告、そしてプロパガンダ。我々はもっとその事実を真剣に疑うべきだったのだ。


「メールは簡単に傍受できません、なぜなら暗号化により完璧なセキュリティが存在するからです。できるとすれぼ政府がプロバイダーにメールの提出を義務づけることだけです。一部の素人がアプリケーションを使ってできるようなチャチな代物ではない。」

イノウエが珍しく大きな声で喋り出した。まるで自分のシステムを否定された時のように怒りを露わにしている。メールの傍受は簡単に実現できない。いや、それはできてはならない、と言うエンジニアたちの一つのテーゼであり、それと同時に宗教であった。現在の日本の金融システムは’”メールの傍受はできない”と言う一つの保証で成り立っている。だからこそYahooもGoogleもパスワードの再設定で登録したメールアドレス宛に新パスワード設定画面のURLを送ることが出来るのだ。メールの傍受はアカウントハックが可能であることと同義なのだ。

 

「認証とういう行為はシステムの心臓です。認証が強固であるからこそシステムは成り立つ。もちろんパスワードの総当たりアタックで他人アカウントのログインは事実上可能です。しかしこれは二つのアプローチで被害を最小限にとどめています。すなわち不正アカウントの即時停止と総当たりアタックに対する防御です。」

 

イノウエの長い説明が始まり、経営陣は、またか...という顔をしだした。こうなると長いのだ、彼は。