Kaz Works

テクノロジーは人に寄り添ってこそ意味があるらしい

サイコプラス(小説版)

02_グリーンコンプレックス

「これは」

破壊されたコンクリート、四散する柵、そしてコールタールの焼けた匂いで息が詰まりそうだ。間違いない、ゲームが木を動かしたんだ、でもどうやって?本当にこのゲームが超能力を持っているのか?

「木って動物だったかしら?」

へ?水の森ちゃんあなたは一体何を言ってるの?

「木は植物だよ。光合成をして根を張って、肺で呼吸をする動物とは違うよ」

「でも、見たでしょう?木がずがーって、まるで哺乳類のように移動したのを。毎年、地球で初めて存在が発見される生物って何種類居ると思う?」

「わかんない、100とか200?」

「細かい亜種を含めると2万種類よ。毎年、人類が発見したことのない生物、植物がそんなに見つかるのよ?歩く木が存在して、そして、その存在を人類がまだ知らない可能性だって十分にありえるわ。いいえ、むしろそう考えるのが自然じゃないかしら」

「そんなものかな?そういう世界的にインパクトのある発見ってアマゾンとか大自然で探すから可能じゃないの?生命体が密集している所とか、ジャンルグルが生い茂っているところとか」

「ノンノン、都会で未発見の亜種が発見されることもよくあるのよ。化学変異とか人類の行動を影響としてDNAが変わるのよね。生命体の状態、性質、機能は一定じゃない。周りの環境に合わせて、常に変化できるのよ」

自分のうんちくをつらつらとしゃべる、ここは聞いておいた方がいいのか?ひとのペースを考えない人だな、この人も。

「そわなわけないよ、ゲームが木を動かしたんだ、十字キーの右、左に連動して木が動いたんだ」

「ゲームってそのサイコプラスのこと?それこそとんでもない発想よ。冷静に考えて電子デバイスと植物たちにインターフェースが接続されているとは考えにくいわ。あなた少し変よ?」

へっ変だって!ひどい、緑色の髪もやっぱり変だと思ってたんだ。

「常識的に考えてゲームが木を動かすことなんてないわ。ここはやはり木が私達と同じような生物だって考えるのが普通よ。冬虫夏草っていう虫に寄生した植物は聞いたことあるけど、植物そのものが自由に動き回るだなんて聞いたことがないわ。もしかして私たちは歴史の証人になりうるのかも」

あなたみたいに非常識な人が常識を語るなんてと言いそうになったけど・・・。それよりもさっきの発言に動揺して頭が混乱している。

「ごめん、今日は帰るよ」

「ちょ、ちょっとサイコプラスのことはどうするのよ?」

「お腹痛いみたいなんだ。たぶん腹痛か下痢だと思う。さいならーーー」

綺麗だって言われたのに、、、やっぱり水の森ちゃんもみんなと同じように、オレのことなんて変だと思ってるんだ。ゲームのこともサイコプラスのことも全て頭からふっとんでしまった。

 

 * * *

 

「おー、緑丸、相変わらずだらしない顔してるな」

東田に言われたくないと思ったけど言うのもめんどくさくなってやめた。昨日は深夜2時ぐらいにベットに潜り込んだけど、寝ついたのは明け方だと思う。当然だ。水の森ちゃんにあんなひどいことを言われたのだから。いつもの授業がより退屈になる。何も頭に入ってこないし、何も考えたくない。

「ガハハ、あれは水の森ちゃんデハ?」

ウェバブルデバイス「ウォッチャー」でセンパイは覗き見をしているようだ。あまり人に言える趣味とは言えないが、少し羨ましくもある。あのレンズからはどんな風景が見えるのだろうか。

「どれどれ、ふーん、あの子一人でいることが多いよな」

東田は相変わらず女の子の分析癖を披露する。女と付き合ったことないくせにダサいやつだ。たしかに水の森ちゃんは孤高の美人って感じで1人でいることが多い。人を寄せ付けない、何かが、気品だったりプライドであったり、そんな水の森ちゃんと、もしかして友達になれた、つもりだったのに。

 

3人で水の森ちゃんを鑑賞していると(あまりいい趣味とは言えないが)派手な格好をした男子学生が近づいてきた。間違いない、水の森ちゃんとのゲーム勝負に負けた連中だ。
「あれはひょっとして逆襲というやつでは?」

ゲームで勝負して負けたら相手と付き合って、勝ったら二度と近づかない、そんなことを繰り返したら、男子生徒から反感を食らうのは当然だ。見たところ、ご綺麗でスマートな男だ。プライドをへし折られたのが気に食わないのだろう。きっとオレとは違う『勝ち組』の連中だ。

「オレ、ちょっと止めてくよ」

「止めるって授業どーすんだよ?」

「代弁してよ、よろしく!」

「次の授業は歴史だぞ、ごまかしきかねーぞ、ハゲたこーーー」

東田の制止を振り切ってグランドに向かう、このtouchとサイコプラスの能力があればあるいは、、、気分はまるで少年マンガのヒーローのようだ。危険な目に合うヒロイン、それを超能力だ助けるヒーロー、題して「水の森ちゃん救出作戦」


「殺してやろうか?」

ニヤリと大袈裟に口角をあげる、ダークヒーローのように

「お、お助けをーー」

あれ?案外あっさりと退散したぞ?水の森ちゃんの言うようにたいした男じゃなかったのかも。

「だ、大丈夫?水の森ちゃん?」

「騒がないで、たいした傷じゃないわ。あの男も人を傷付けるほどの度胸はないみたいね。3日もあれば後も残らないほど綺麗に消えるわ」

「よかった〜、女の子の頬に傷が残ったらどうしようかと思ったよ」

「変なアクマね、なぜ人の体を気にするのかしら」

へ、変だって?まさか悪魔のこと信じてるんじゃないだろうな。思い込みの強い子だからあるいはそれもむしろ自然かもしれない。

「あのさ、前のゲームの勝負、あれあなたの勝ちにしてあげる。私は起動できなかったしね」

「そ、そうなんだ!うんうん、それがいいよ」

「次はねーーー」

次?あなたはまた何をするつもりなんだ

「悪魔のモノマネにしようかな、いるでしょう?悪魔のモノマネが得意な人が」

悪魔のモノマネって、なんだオレが演技したの知ってたのか。